犯罪をした人などが、社会復帰するまでにどのような処遇を受けるのか、「施設内処遇」と「社会内処遇」とに分けて見ていきます。
・刑事施設における処遇
裁判で実刑判決を受けた人は、刑事施設で刑が執行されます。入所から出所までには、受刑者一人ひとりの特性や生活環境が調査され、それに応じて、改善更生に向けた処遇要領が策定され、矯正処遇として、作業及び各種指導(改善指導・教科指導)を行い、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ります。(図表1)。
改善指導には、改善更生や円滑な社会復帰に支障を来す個別の事情を改善するために行う「特別改善指導」と、その他の「一般改善指導」があります。
また、円滑な社会復帰と再犯防止には、「居場所(住居)」と「出番(就労)」の確保が重要であり、社会復帰支援として就労支援や居住支援及び福祉的支援を行うために、自治体を始めとする出所後の支援者との連絡調整なども行われます。
・少年院における処遇
家庭裁判所の決定により保護処分(少年院送致)となった少年は、少年院に収容されて、矯正教育、社会復帰支援等を受けます(図表2)。
少年院では、設置された矯正教育課程(注①)ごとに、当該少年院における矯正教育の目標、内容、実施方法等を定める少年院矯正教育課程を編成しています。 その上で、入院してくる少年一人ひとりの特性及び教育上の必要性に応じ、家庭裁判所や少年鑑別所の情報及び意見等を参考にして個人別矯正教育計画(注②)を作成し、きめ細かい教育を実施しています。
注①(矯正教育課程):在院者の共通する特性ごとに重点的に実施する矯正教育の内容や期間を定めた標準的なコースで、義務教育課程、社会適応課程、支援教育課程、医療措置課程、受刑在院者課程があり、少年院ごとに指定されています。
注②(個人別矯正教育計画):在院者一人ひとりの特性に応じた矯正教育の目標、内容、期間、実施方法等を具体的に定めたものです。
刑務所や少年院等で行われる「施設内処遇」に対して、犯罪をした人などが地域社会の中で立ち直るための保護観察官及び保護司による指導監督・補導援護を行う仕組みとして「保護観察」があり、「社会内処遇」と呼ばれます。
犯罪をした人の更生には、本人の強い意志や行政機関の働きかけだけではなく、地域社会の理解と協力が不可欠であり、保護司、更生保護施設をはじめとする更生保護の民間団体のほか、関係機関・団体との幅広い連携によって社会内処遇は行われています。
・保護観察とは
保護観察とは、犯罪をした人などが、地域社会の中で更生するように保護観察官及び保護司による指導監督と補導援護を行うものです。保護観察の対象者は、図表3のとおりで、全国で年間約4万9,000 人(東京都は年間約5,300 人)が保護観察を受けています(令和4年取扱事件数)。
保護観察は、全国50 か所(各都府県1か所・北海道は4か所)の保護観察所に配置される保護観察官(全国に約900 名、東京都に約140 名)と地域で活動する保護司(全国に約4万7,000 名、東京都に約3,300 名)とが協働して行っています。保護司は、犯罪をした人などの立ち直りを地域で支える民間のボランティアです(法務大臣から委嘱されており、身分上は非常勤の国家公務員です。)。保護観察官の持つ専門的知識と保護司の持つ地域性・民間性(地域の事情や慣習に対する深い理解と民間人としての柔軟性)を組み合わせて、保護観察の実効性を高めています。
なお、保護観察官と保護司以外にも社会内処遇を支える民間協力者がいますが、それら協力者については「05 社会復帰を支える関係機関・団体にはどのような人がいるか」で紹介しています。
・保護観察ではどのようなことをしているのか
保護観察では、保護観察対象者の改善更生を図ることを目的として、保護観察官及び保護司が、面接等の方法による指導(指導監督)と、対象者が自立した生活を送るために必要な援助・助言等の支援(補導援護)を行います(図表4)。