2009年に地域生活定着支援センターの設置が開始され、東京都においても2011年に東京都地域生活定着支援センターが開設し、現在13年以上経過しています。服役中から障害サービスや介護保険の導入など、障害や高齢の刑余者の出口支援である特別調整を主な業務として行ってきました。また、本年度から東京都地域生活定着支援センターも被疑者等支援業務を開始し、出口支援だけでなく、入口支援にも関与することとなりました。
日頃、支援している対象者は様々な問題や生きづらさを抱えています。特に貧困と障害と犯罪は密接であると考えています。貧困が犯罪につながりやすいこと、障害による能力的制約が貧困や犯罪を招きやすいことはもちろんですが、犯罪による服役後貧困に陥り、障害が悪化することもあります。さらに原家族の機能不全、何らかのトラウマ、不安定な交際や対人関係障害、アディクションなど、生きづらさが負の連鎖を起こしている対象者が極めて多いです。
こうした状況を解決する際に、「犯罪を防ぐ」という行動障害のみを修正することを支援者や家族は皆、考えると思います。犯罪をやめて欲しいのです。ところが犯罪に至る経緯や認知は千差万別です。「犯罪を防ぐ」のみの対応では根本の問題が解決していないため、一時的に落ち着いたとしても、支援者や家族が油断した頃に再犯に至ることが多いです。行動障害のみの修正による再犯防止は難しく、やはり生きづらさや、対人関係障害、認知の歪み、家族関係といった問題を包括的に支援することにより、結果、犯罪が減っていくことを目指すこととなります。こちらの対応の方がより福祉的支援寄りであると言えるかもしれません。
東京都地域生活定着支援センターでは専門性の高い特別な支援を導入しているわけではありません。支援計画は犯罪を防ぐことよりも、犯罪に至る経緯のアセスメントと必要な福祉的支援の包括的支援計画を目標としています。東京都地域生活定着支援センターが特別な支援を行っているのではなく、地域福祉のネットワークが互いの専門性を活かすことができるようなコーディネートを心がけております。
また地域生活定着支援センターだけではなく、司法福祉は全般的に質・量ともにマンパワーの不足が問題となっています。「犯罪に至る以前に福祉支援の対象者だった」「服役を終えたが自立に至らず福祉的支援が必要になった」「服役中に加齢や障害、疾病の悪化により福祉支援の対象者となった」このような対象者の支援は一般的な福祉支援とそれほど差がないと感じています。司法福祉が特別な支援となる社会ではなく、一般的な福祉支援の対象となる社会作りにより、マンパワー不足が解決することを願っており、また地域生活定着支援センターがこうした社会作りの一助となれば幸いであると思っております。